西野弘の時々刻々
対談「米で注目度増すVMOスタンダード」2006年03月01日
COPC-2000®VMOスタンダードが誕生した背景や、米国での活用状況について米COPC社CEO Alton Martinとプロシード社長 西野が対談しました。
コンタクトセンターの現在と展望

西野:はじめに、コンタクトセンター業界の今後をどう捉えているか教えてください。
Alton:コンタクトセンターはまさに成長めざましい業界と言えます。当社がサービスを展開しているどの国や地域においても、コンタクトセンターは以前よりもずっと重要なポジションになっています。企業と顧客のコンタクトを統合管理する機能として、従来の「コストセンター」としての認識は薄れてきています。顧客との唯一の接点としてコンタクトセンターを位置づける企業も多くなった現在、企業の重要な機能のひとつと捉えられるようになっています。
西野:インターネットや電子メールの普及につれて、コールセンターは縮小するのではないかとかつては考えられていましたね。私は実際には逆になると感じていましたがAltonさんはどうですか?
Alton:インターネットなどの新しいチャネルが増えたことで、さらにコンタクトセンタービジネスが伸びる原動力になりました。Webやメルマガを見た顧客が企業に電話してくるなど、市場全体のコール応対件数は増えており、また顧客コミュニケーションの密度も深まりつつあります。
西野:コンタクトセンターのグローバル化も顕著ですね。
Alton:そうですね。グローバル化は、コンタクトセンター以外にも、企業内のサービス部門、店舗網などとのネットワーク化をはじめ、顧客に一貫して高品質のサービスを提供する中で、顧客コンタクトポイントの統合化が進むでしょう。規模拡大やカスタマースキルを確保する上でアウトソーシングも活発になって来ています。それに伴ってオフショア市場も伸びています。各地域の特性を生かしたオフショア市場が形成されつつあり、今までセンターが存在しなかった地域への集積が始まっています。ICTの活用によって一段と地域が広がりつつあります。インドやフィリピンはよく知られていますが、COPCも北アフリカ、中近東、EU市場での活動も活発になってきました。
ますます増大するマネジメントスタンダードの位置づけ

西野:そういった背景を踏まえて、COPCを代表とするマネジメントのスタンダードが今後どのような意義を担っていくのか、その展望をどう考えていますか。
Alton:アウトソースやオフショアにより大規模化かつ複雑化したコンタクトセンターを運営するためには、そのオペレーションに適したマネジメントモデルを構築することが必須だろうと考えます。持続的な運営改善を推し進めるための哲学が、そこに従事する個人やチームに、これまで以上に求められてきています。こういう現実を見ると、最新のベストプラクティスとして参照できるナレッジを創り出すCOPCスタンダードの意義はさらに増していくのではないでしょうか。
米で注目度増すVMOスタンダード

西野:Altonさんはこの業界で15年ほどの経験をお持ちですが、オペレーションの品質やパフォーマンスの実態を見続けてきた中で、コンタクトセンターの発注者側のマネジメントモデル(VMO:注1)をスタンダード化して展開していますね。まず、VMOとは何か?またVMOがもたらす意義について教えてください。
Alton:COPC 規格の歴史に少し触れることになりますが、1995年に最初のCOPC-2000®規格を起案した際に、そもそも私どもCOPC社はコンタクトセンターサービスの発注者やインハウスセンターを運営する企業との共同作業の中で、いったいどういった特徴を備えたエージェンシー(CSP)が優秀なのか?を捉えようとしていました。まず、エージェンシーの優秀なパフォーマンスを規定し、それをモデル化して展開していったわけです。その活動から5年ほどたった頃、今度は発注者側の企業から、根本的な問題を解決するためには、発注者サイドのパフォーマンスを向上させるマネジメントモデルも必要ではないか、という声があがったのです。
センターのスタッフの人材育成や取引量の予測といった活動を適切に行なうためには、エージェンシーの努力だけでは不十分であり、クライアント側のマネジメントが求められるのだと悟ったのです。さらに彼らは、発注や調達業務を大変独特なものと捉えていました。サービスやそのマネジメントを購入するという作業は単なる調達活動にとどまらず、幅の広い品質活動につながるという認識もありました。
西野:いまおっしゃったような、サービスやマネジメントを購入するノウハウを持った組織・個人を探すのは、大変難しいように思います。そういった意味でも、VMOはサービスの調達において今後重要なのではないかと思いますが。
Alton:そうですね。業界全体を見てもエージェンシーの成長は目覚しいですし、活用の深さに違いはあるものの、顧客接点の業務がアウトソースされる比率は高まっています。企業の生命線とも言える顧客とのコンタクト自体を発注する際に、そのマネジメントを発注者として監視し、マネジメントしていくVMO 機能は、業界全体の傾向からも重要度が高まっているように感じています。ただ、VMOは、従来のような調達部門を指す概念ではありません。調達、営業、コントラクトマネジメントなど複数の組織が持っている機能を束ねてVMOと定義する必要があります。マネジメントの購入 ~パフォーマンスを購入する、と言い換えられるかもしれませんが~ には、こういった部門横断的な機能を束ねることも必要なのです。
VMO、人材育成にも高い効果!?

西野:では現在どういった企業がVMOスタンダードに興味を持って取り組んでいるのでしょうか?
Alton:米国では、DELL、Microsoft、AmericanExpress、AdobeSystems、GE、Fordなどは、現在VMOスタンダードを活用している企業です。Sprint、Horizonなどもユーザーです。そうした企業の特徴は、大規模かつグローバルな組織であり、オペレーションが複雑であることがあげられます。また、コスト意識が大変高いのも特筆すべきことだと思います。VMOスタンダードが様々なオペレーションの形態で標準的に活用できるモデルを提示していることがこのような企業に採用されている理由だと思います。
西野:その他のVMO活用のフィードバックにはどのようなものがありますか?
Alton:人財教育の一環で活用する企業もいれば、スタンダードがめざす結果主義に共感し、組織認証に挑戦している企業もいますが、どちらからもおおむね評価は高いです。
西野:コンタクトセンターサービスを提供するオペレーション側とそれを購入する側の両者に対して、マネジメントモデルを提供できるようになったことで、より強力にパフォーマンスを追求できるようになったと言えますね。
Alton:全くその通りです。製造業を見ると、サプライヤーのコミュニティーに積極的に参加し、ともに最高のパフォーマンスを追求している。 VMOもサービス業における同様の取り組みです。両者を効果的にリンクさせることで、ともに高いパフォーマンスを目指していくことが目的です。
また一方で、一旦パフォーマンスを追求すると決めた企業は、コストパフォーマンスの低いサプライヤーから適切なパートナーへと、戦略的に購入先を選択していくことが必要になってくるのです。組織作りも同時に大切ですね。我々はCOPCを通じてプロセスマネジメントの重要性を説いてきましたが、同時にベンチマーキングにより組織作りの効果的な方法も研究してきました。こういったことも今後多くの企業に広めていけるようなプログラムも考えて行きたいと考えています。
西野:プロシードも、COPC社と提携してすでに9年目に入りました。今後も、VMOを含めた付加価値の高いサービスをしっかり吸収し、日本においても顧客視点に立ったコンタクトセンターのパートナーシップモデルの普及を目指したいと思っています。COPC社との今まで以上に強いパートナーシップを元に展開していきます。本日はありがとうございました。
対談を終えて。
COPCは3人のパートナーが始めた組織で、今回来日したAlton Martin CEOもその一人である。対談からも明らかなように、COPCも単なるコンタクトセンターの効率や品質のマネジメントフレームから、本来のサービスをきちんとしたフレームに沿って調達し、その後もしっかりマネジメントするモデルへと進化し始めている。かつての製造業のように、まだまだ改善すべきことが多くあり、我々自身も学習することの大事さを忘れずに、日本からも世界的なサービス調達のベストプラクティスを輩出できるようにしていきたいものである。
注1:VMO
Vendor Management Organizationの略。 VMOとは、企業内でベンダーの選択から委託契約、運営管理、財務管理等に多角的にマネジメントする責任を負った組織。現実は、部門単位でまとまっていることは稀で、社内の横断的な仮想組織であることが多い。
Alton Martin氏の略歴
米国COPC社(Customer Operations Performance Center Inc)の創業者であり、現CEO。コンサルタントとしても、南北アメリカ、ヨーロッパ、インド、シンガポール、中国およびスカンジナビアにおいて、数百のコンタクトセンターのアセスメント経験を持つ。
西野弘株式会社プロシード 代表取締役社長
平成3年 株式会社プロシードを設立。代表取締役に就任し現在に至る。総務省次世代携帯ビジネスモデル研究会会員、沖縄県産業復興審議会委員、スウェーデン王国王立サムハル社会福祉事業団日本代表、2001年未来基金会長(ビルゲイツ印税基金)を務める。


























