コロナウイルス(COVID-19)のコンタクトセンター業界へのインパクト

2020.03.26

コロナウィルス危機が世界規模で広がりを見せています。日本国内でも、企業より対応に差があるものの、健康状態による自宅待機の推奨や、学校の休校にともなう、自宅での子供のケアのための欠勤といった対策や状況を多くの会社のみなさんからお聞きしています。

また、クライアントの皆様から、「在宅勤務」の導入についての質問を受けることも多くありました。今回はCOPC社サイトから、コロナの影響と在宅勤務オペレーションの導入というトピックの記事をご紹介します。323日付のものです。

フィリピンでは、政府がルソン島(マニラ市を含む)のシャットダウンを決定し、それにより多くのコンタクトセンターがスタッフに対してもそのドアを閉じました。英国や米国、韓国においてもコンタクトセンターはCOVID-19の発生事例を報告しており、ソウル市長は都市部での大規模感染の発生源でもあると発言しています。


私たちの健康に対しての大きなインパクトと共に、今回のコロナウィルスは、今までに例をみない困難をコンタクトセンターやBPO業界にもたらしています。数百万といったレベルのオフィスワーカーが在宅勤務の環境への変更を求められています。

クラウドベースのコンタクトセンターソフトを提供する、テキサス州オースチンのSerenova社によると、現時点では、全世界の組織の約90%はオンプレミスのコンタクトセンターソリューションを活用しているとのことです。これは、大部分の組織は、コロナ禍により迅速な変換が求められている在宅勤務に対して十分な準備が整っていないということを示しています。

今回、在宅勤務の導入に成功している組織には、テレパフォーマンス社、コンセントリクス社、テックマヒンドラ(TechM)社といった大規模なBPO企業が含まれています。その理由の一つには、これらの会社はすでにクラウドベースのテレフォニーシステムやサポートシステムを活用しており、また通常業務として在宅勤務者を活用したサービスをすでに提供していることにあります。例えばTechM社は、コロナ危機に対応して、既に10,000人以上のオンサイトエージェントを在宅勤務に転換しています。

COPCのシニアコンサルタントのシンディ・エドワーズは、この10年間で数多くの在宅勤務を活用したコンタクトセンターのサポ―トを実施しています。彼女は、うまく運営されている在宅勤務オペレーションに共通する特徴を、コミュニケーションと技術サポートの視点でまとめています。

シンディによると、成功している在宅勤務のオペレーションでは、「エージェント、チームリーダー、マネジメントのすべての階層が、戦略の視点ではなく、日々のオペレーションの視点で、現場で何が起こっているかを理解している」ことが共通しています。在宅勤務で成果が出ていない組織では、あまり有効ではないコミュニケーションのツールを使っており、スタッフとのコミュニケーションを優先事項としていません。

在宅勤務オペレーションのグローバルでのフロントランナーであるTechM社のスコット氏も、コミュニケーションの重要さに同意しています。「すべての標準的なコンタクトセンターのプロセスは『バーチャル化』されています。e-Learning、バーチャルなサイドバイサイドの新人育成、リモートアクセス、ビデオ会議を使った対面コーチング、バーチャル休憩室、スマートチャットやタウンホールミーティングといった具合に、です。私たちの組織では、バーチャルチームリーダーが25:1のエージエント比率で存在し、リモートチーム内での関係を構築しています。」

シンディは、テクノロジーが一貫して活用できるようになっていることの重要性と、スキルやツールを持ったITチームリソースが十分に確保されていて、問題が起きた時に迅速な対応をとることで、全員が稼働可能な状態を維持することの重要性も付け加えています。

在宅勤務のエージェントに用意すべき環境とは?
勤務をする家庭での環境が、長時間の勤務をサポートするものであることは重要です。作業しやすい机や椅子、適切なテクノロジーは、いずれも欠くことは出来ません。加えて、音の問題も無視できない大きなものです。ドアの「バタン」と閉まる音、犬の鳴き声、子供の叫び声、いずれも家庭環境での在宅勤務の実現可能性に影響を与えます。そのため、ほとんどの組織では、コンタクトセンター業務の在宅での実施の条件に、「静かで、プライベートな作業環境を持っていること」を挙げています。ドアを閉めることのできる独立した部屋や、鍵のかかる部屋を条件とする組織も多くあります。


スコット氏は、TechM社のアプローチについて付け加えています。「私たちの在宅のコールセンターでは、ユーザーとクライアントの両方に対してのシンプルさとユーザーフレンドリーさにフォーカスしています。自社の持つソリューションは、ホームエージェントの作業の中断を極力発生させないように最適化しています。そのため、私たちは、ホームエージェントに自分のPCや既に家庭に引いているハイスピードのインターネット回線をそのまま使うことを認めています。インターネット回線のスピードやPCのスペックに関しての自動検査がこれをサポートしています。またTechMでは、作業環境の条件については厳格なものを導入しています。それには、ドアの閉まる部屋といった条件や、そのロケーションも含まれており、人間工学の視点でのオフィスのセットアップに関してのアドバイスも用意されています。」

在宅勤務のソリューションのセットアップにはどのくらい時間がかかるのか?
テクノロジー部分のセットアップに関しては、比較的短時間で実施することが出来ます。テクノロジーベンダーによると、ほぼどんな環境においても、48時間以内で在宅勤務のソリューションを導入することができると分析しています。バックステージ側の機能やサポート機能を確保するには、それ以上の時間を要すると思われますが、COPC社の過去の経験では、多くの組織では数日の間で機能を備え、しっかり運営できる在宅勤務のオペレーションを立ち上げることが出来ると考えます。

オーストラリアのCXコンサルティング会社、Customer Science社のトッド氏も、在宅勤務のオペレーションの立ち上げは比較的短時間でできることに同意していますが、一方、その導入スピードはリーダーシップのコミットメントや、その時点に至るまでにかけられたオペレーションの準備のレベルによると警告しています。

「オペレーションを自分で立ち上げるのであれば、数日間かかると思います。外部からのヘルプがもらえるのであれば、『時間』単位で測かれる期間で立ち上げられるでしょう。」トッド氏は言います。「チャレンジの部分は、テンプレート化されたプロセスやポリシーを用意すること、テクノロジーの準備を完了すること、勤務者を確保することにあります。」

Customer Science社の経験では、リーダーシップのコミットメントがあれば、在宅勤務のアプローチは迅速に導入できます。ヘッドカウントの要件、テクノロジーの準備、要員管理の必要性、既存のポリシーやプロセス、データセキュリティ/プライバシー要件、変更管理といったチェックリストを用意して、在宅勤務を実現するための項目の準備状況を確認することをアドバイスします。

セットアップのステップのいくつか活動はとても地道な活動です。例えば、フィリピンのクライアントの1社は、バンやトラックをレンタルして、コールセンターから機材を在宅勤務者の家へ運び、作業環境のセットアップをサポートしました。

米国の別のクライアント(Sykes社)では、週末を使って、ハードウェアを勤務者の家庭に配送し、ソフトがうまく動くかの確認を実施しました。大変な作業ではありましたが、翌週の業務開始時点では、Sykes社は追加で1,000人の在宅勤務者をオペレーションに加えることができ、ケンタッキー、バージニア、テネシー、フロリダといったサイトのスペースを空け、人口密集地域を減らすことにも貢献しました。

在宅勤務の利点は言うまでもなく、柔軟な労働力の供給と事業継続性への貢献にあります。TechM社のスコット氏は、このモデルは業務量のピークや谷に対応することにもう役立つと考えています。

「コンタクトセンターの労働力の一層の柔軟性は在宅勤務モデルの効果の一つです。例えば、自宅で勤務するスタッフに短時間でオンラインになってもらうことで一日の中のピークへの対応がより可能になります。センター勤務者に、一日の中で複数回出勤、退勤を繰り返してもらうことは無理ですから。同時に、今回のコロナウィルス危機のようなケースで、ビジネスを維持するために会社が迅速に動くことを可能にしています。」

インターネットアクセスの重要性
在宅勤務者は通常のセンター勤務者よりも、同僚やチームリーダーから必要な情報を得るのに時間や労力を必要とします。とても簡単な質問に対しての回答を得ることでも、在宅勤務者にとっては困難に思えることがあります。

この問題に対する解決の一つは、ナレッジベースシステムの導入です。オーストラリアのナレッジ管理ツールベンダーのLivePro社のCEOブラッド氏は、「在宅勤務のエージェントには、『どんな情報が必要で、それをどのように提示してほしいのか』をフィードバックすることができるナレッジ管理のシステムが不可欠です。また、在宅勤務のエージェントを管理するマネージャーは、ナレッジ管理システムが提供する、分析や顧客に関するインサイト(考察)を必要としています。」とコメントしています。

COPC社では、在宅勤務環境のエージェントが提供されている情報は、センターで勤務しているエージェントと比較すると精度が低いと分析しています。COPCのリサーチでは、在宅勤務エージェントは、インフォーマルな形でサポートスタッフや同僚から伝達される情報が少ない環境にいるため、一人ひとりが孤立して対応する環境でなければ発生しない、自らの「推測」に頼った返答をする場面があることがわかりました。ブラッド氏はまた、ゲーミフィケーションを採用することで、在宅勤務のエージェントのナレッジ管理ツールの正しい活用や、お客様への正しい回答をすることが促進できると考えています。

より多くの人が在宅勤務となることでのトラフィック量の増大にインターネットは耐えられるのか?
インターネットへの接続性は国ごとに、また市ごとに異なりますが、ほとんどのISPは、数百万単位の人が在宅勤務となり、トラフィック量が増大しても、ネットワークは耐えうると考えています。


英国のBT社は、在宅勤務者が自宅からブロードバンドを活用するケースが増えたとしても、ブロードバンドネットワークが対応できることに自信を持っていると伝えています。米国では、専門家は、アメリカのコアネットワークは既に過剰なまでの供給状態にあり、需要の急拡大にも十分対応できるといっています。

イタリアのインターネットは、政府が外出禁止に踏み切ってから、ピーク時間帯において30%のトラフィック増となっていますが、現時点ではインターネットのスピードの低下は確認されていません。

一方、フィリピンを含めいくつかの国では、インターネットのスピードの低下が確認されています。フィリピンのDepartment of Information and Communications Technology DICT)省はルソン島の外出禁止に伴ったユーザーの急増によりインターネットスピードが低下したと伝えています。インドにおいても、インターネットのスピード低下によりテクノロジーの集積地であるベンガルール地域で苦情が出ていることに対しカルナタカ州のIT省が調査に入っている状況です。

結論
コールセンターの在宅勤務化は、コンタクトセンター業界の将来とみなされ、多くの組織は生産性の向上を伝えていましたが、私たちの分析ではそのデータは偏った視点のものと捉えています。

COPC社バイスプレジデントのスコットはその偏りを指摘しています。「もし、在宅勤務のモデルが、センター勤務のエージェントのなかから選ばれたスタッフを在宅勤務に転換して運営するものと考えれば、その通りそれらのスタッフの生産性は高いでしょう。しかし、私の意見では、それは単に一部の優秀なスタッフのみが在宅勤務のオプションを提示されたからに過ぎません。」

コロナウィルス危機は在宅エージェントの導入を後押ししている現在、会社はだれが在宅勤務となってよいといった選択をしている場合ではありません。ほとんどすべてのビジネスはお客様へのサービスの提供を継続しなければなりません。そのためには、いくつかの国においては、その短期的な解決策として、痛みを承知で在宅勤務オペレーションのオプションを進めなければなりません。

「多くの会社は在宅勤務のセンターを立ち上げるのに困惑しています。」 COPC社アジア太平洋地域CEOのイアンは、こう言っています。「それらの会社は今までに実施したことがなく、最初に取るべきステップを理解していません。ほとんどの地域では、外出禁止等の措置により、スタッフが出勤できなくなる状況で、急激なU字型の危機に遭遇しています。U字の底の部分の対応は在宅勤務によって実現可能です。私たちのようなコンサルティング会社や、アウトソーサー、テクノロジー企業、スタッフィング企業は一丸となって、この危機のクライアントへのサポートができるよう尽力します。」

私たちは、このような世界規模のチャレンジに直面したことはありません。しかし、クラウドベースのシステムが今まで以上に活用されている現在、またインターネットの接続性がこれほど向上している現在、私たちの業界は、嵐をやり過ごすことができる状況にあると信じています。

在宅勤務の環境へのアドバイス、サポートが必要であればCOPC社にコンタクトください。

今回は、フィリピンやラテンアメリカの事情の部分を割愛してご紹介しています。

全文は以下のリンクでご確認いただけます。
https://www.copc.com/how-to-move-to-a-work-at-home-model-when-a-rapid-response-is-required/

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